司法書士法人アドヴァンス

生前の相続対策を考えたときに押さえるべき視点

1. 現在の状況を把握すること

現在の状況を整理することにより、対策の内容が明確になります。

将来の相続発生時に
相続人は誰になりますか?
法定相続人は誰になるの?
それぞれの法定相続分の割合は?
相続税の基礎控除額は?
ご自身の財産の内容を
把握できていますか?
不動産の名義は?
預貯金・株式・証券はお持ちですか?
生命保険は?
ローン・借入は?
ご家族の皆さまで共通の認識をお持ちでしょうか?
今後もし認知症になってしまったときのこと
不動産や自社株等の財産管理について不安がある
相続税対策をしていかなければならない
自分が亡くなったときに家族が争わないか心配
ご家族の皆さまで共通の認識をお持ちでしょうか?

2. ご家族の達成したい目的を明確にすること

相続発生後と違い、生前の相続対策は十人十色。ご家族の実現したい想いをお聞かせください。

特定の家族に財産を多めに渡したい。どうしたらいいかしら?

特定の家族に財産を多めに渡したい。
どうしたらいいかしら?

資産承継の対策

財産の承継先をあらかじめ指定する場合は、遺言/民事信託/生前贈与/生命保険の活用があります。

将来の財産の管理に不安がある。

将来の財産の管理に
不安がある。

財産管理の対策

財産管理を特定の者に任せたい場合は、民事信託/任意後見での対策があります。

なるべく相続税がかからないようにしたい…

なるべく相続税が
かからないように
したい…。

相続税の対策

生前贈与/生命保険/民事信託/相続発生時の特例適用についてシミュレーションした上で検討していきます。

相続税・贈与税の計算方法について(PDFファイル)

遺留分の対策、寄与分・特別受益の対策、その他の対策については、
ご事情をお聞きしながら、どのような対策があるのか、提案させていただきます。

生前贈与について

相続税対策に効果的な生前贈与の方法3つ

生前贈与とは?

まず、生前贈与について簡単にご説明しておきます。生前贈与とは、その名の通り将来相続人になる人物が相続税の負担を減らすために生前から贈与を行っておくことです。そして贈与とは、無償で第三者に財産を渡すことです。

つまり、生きている間に財産を誰かに(主に子供や孫などの親族)分け与えることで将来訪れる相続で該当する相続財産をあらかじめ減らしておくことです。

一方で、生前贈与には贈与税が該当する場合もありますので、贈与税の課税対象にならない範囲内で生前贈与を行うことが相続税対策として重要になります。

それではさっそく、相続税対策に効果的な生前贈与の方法をチェックしていきましょう。

生前贈与とは?

相続税対策としてできる生前贈与には主に3つあります。

(1)毎年110万円の贈与

相続税対策の生前贈与と聞いて真っ先に浮かぶことが『110万円の基礎控除を利用した毎年の贈与』です。
贈与税には年間110万円という基礎控除があります。
つまり、毎年毎年110万円以内の贈与を行えば贈与税を払わずに生前贈与をすることができるのです。

これは誰にでもできますし、難しいこともありません。

(2)相続時精算課税制度を利用した相続税対策

相続時精算課税制度とは、60歳以上の贈与者(親・祖父母)から20歳以上の受贈者(子・孫)に対する生前贈与の贈与額が累計2,500万円を超えるまで贈与税がかからない制度です。

条件にさえ当てはまればかなり強力な相続税対策をすることができるでしょう。

贈与者と受贈者の条件
贈与者(贈与であげる人) 60歳以上の親・祖父母
受贈者(贈与を受ける人) 20歳以上の子・孫
(3)贈与税の非課税枠を利用した相続税対策

以上が主な相続税対策に使える生前贈与の方法ですが、これ以外にも相続税の非課税枠を利用して生前贈与をすることで贈与税をかけずに相続税対策をすることができます。生前贈与で利用できる非課税枠については以下の項目でご紹介していきます。

生前贈与で利用できる6つの非課税枠

それではさっそく、生前贈与で利用できる6つの非課税枠にご紹介していきます。

① 基礎控除

お伝えのように相続税には年間110万円の基礎控除がありますので、1年間で110万円以下であれば非課税で生前贈与することができます。

② 相続時精算課税の特例

こちらの非課税枠もすでにお伝えしましたが、60歳以上の親・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与は2,500万円まで非課税枠になります。

③ 住宅取得資金贈与の特例

子供や孫が住む住宅の購入資金の最大3,000万円なら贈与税の非課税となる特例です。

子供・孫が住宅を購入するタイミングで高額な財産を持っていたら住宅取得資金贈与の特例を活用しましょう。

④ 教育資金贈与の特例

30歳未満の子供・孫に対する教育資金の贈与は、1,500万円までなら非課税になる教育資金贈与の特例があります。

なお、こちらの特例は平成31年3月31日までとされています。

⑤ 結婚子育て資金贈与の特例

20~49歳の子供や孫が結婚・子育てに必要になる資金の贈与は1,000万円まで(結婚資金は300万円)が非課税となる特例です。

こちらの特例も平成31年3月31日までとなっています。

上記の多くが親→子供、祖父母→孫という贈与に対する非課税でしたが、夫婦間での贈与税非課税枠もあります。

ただ、あらかじめ言っておきますと、夫婦間の相続では高額な配偶者控除があること2次相続が生じることもあるので、夫婦間での生前贈与での相続税対策はそこまで必要性は高くないのかなと感じます。

夫婦間贈与の特例とは、婚姻期間が20年を超える夫婦が居住用の不動産や土地を贈与する場合に、最大2,000万円が非課税となる特例です。

生前贈与をするときの注意点

このように、相続税対策に役に立つ生前贈与の方法や非課税枠は数多くあります。しかし、生前贈与をするにあたって注意するべきポイントがいくつかあります。きちんと注意点を抑えておかなければ

① 贈与税の課税対象になる

② 贈与と認められず結局相続財産として残る

このような失敗をすることも考えられます。特に①については、贈与税の税率は相続税よりも高いので、逆効果になってしまうことも考えられるのです。

それでは、以下のポイントに気を付けて生前贈与をしましょう。

控除額に注意!

繰り返しますが、贈与税の税率は相続税の税率よりも高いです。

「気づいたら控除額を超えていて贈与税の対象になっていた」なんてことにならないように気を付けましょう。

控除額上限
基礎控除 110万円
相続時精算課税制度 2,500万円
住宅取得資金贈与の特例 3,000万円
教育資金贈与の特例 1,500万円
結婚子育て資金贈与の特例 1,000万円
夫婦間贈与の特例 2,000万円

上に各非課税枠の上限額をまとめましたので、今一度確認するようにしましょう。

贈与したやり取りをきちんと残す

そもそも生前贈与は贈与者が一方的に贈与しても認められないことが多いです。

さらに、贈与したことをきちんとした書面で残していなければ同じく贈与として認められないケースもあります。

この場合、結局元の人物の財産として扱われ相続時に相続税の対象となることも考えられるでしょう。そこで、

•贈与契約書を作成して公証役場で日付をとる

•送金した記録を銀行振込などの形に残す

•基礎控除額を少し上回るようにして贈与税の申請と納付をする

このような方法をとり『贈与をした』ということをきちんと形に残しましょう。

贈与した時期によっては相続財産になることも

「もう後先長くない」と、生前贈与を考えている方がいるかもしれませんが、「3年以内に贈与された財産は贈与税の対象であっても相続財産として加算される」と書かれています。

この場合、結局元の人物の財産として扱われ相続時に相続税の対象となることも考えられるでしょう。そこで、

場合によっては贈与していたつもりでも後々相続財産となってしまうケースも考えられますので、生前贈与は早い段階から計画的に行っていくことをおすすめします。

高額な財産を生前贈与するのであれば専門家の意見を聞く

相続時精算課税制度や住宅購入の資金、教育資金などの特例を使えば数千万円の高額な控除を受けることができます。

面倒な手続きが発生してしまいますが、自分だけでも申請することができないわけではありません。

しかし、このような高額な財産を他の人に移す際は専門家の意見を取り入れることを忘れないようにしましょう。

税金に関することは『税理士』、生活に関わるお金に関することでしたら『FP(ファイナンシャルプランナー)』に相談するといいでしょう。

生命保険の活用について

生命保険を活用した相続対策

相続対策において、生命保険を活用する際、以下のポイントを押さえておく必要があります。

  • 生命保険の受取金は、受取人固有の財産であり、遺産分割協議の対象外(※)
  • 相続発生後、すぐに現金化できる(凍結されない)
  • 生命保険には、非課税枠がある(500万円×法定相続人の数)
  • 生命保険は、相続放棄の対象外

※生命保険金は、死亡保険金受取人固有の財産とされています。ただし、相続人間に著しい不公平が生じる場合(例:家庭の保険金が相続財産の半分以上を占めるような場合等)には、死亡保険金受取人固有の財産とみなされない可能性があります。

相続における見直し対象の保険を探す

当初の保険契約当時は、家族を守るため、財産を増やすために効果があった保険契約でも、長い歳月の経過により、相続を迎える時期にあたって不適切な保険として継続している保険が多数見受けられます。
相続税の非課税枠が活用できない保険や、相続時に贈与税がかかる保険は、見直しや受取人変更を検討しましょう。

◎死亡保険金にかかる税金

契約形態 契約者 被保険者 受取人 被保険者が亡くなった場合の税金の取り扱い
保険者と被保険者が
同一人の場合

(被相続人)

(被相続人)

(相続人)
相続税
非課税枠適用 OK
契約者と受取人が
同一人の場合(※)

(相続人)

(被相続人)

(相続人)
所得税・住民税
契約者、被保険者、受取人が
それぞれ異なる場合

(被相続人)

(相続人)

(相続人)
贈与税

※契約者である母が高齢の場合、母死亡時に解約返戻金相当額が母の相続財産となるため、見直しの検討が必要です。

相続における見直し対象の保険を探す

契約者・被保険者が被相続人で、受取人が相続人の場合、受け取った生命保険金は、民法上「受取人の固有財産」となりますが、相続税法上、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります(相続税法第3条1‐1)。しかし、次の金額までは「非課税財産」として、相続税は課税されません。

手持ちの預貯金を相続税のかからない財産(=保険)にシフトすることができます。また、不動産と異なり、保有時の税金、空率リスク、借入金の返済等、リスクが少ないのが特長です。

相続税法第12条:「相続税の非課税財産」

500万円×法定相続人の数=非課税限度額

◎受け取った生命保険金が非課税財産となる契約形態

契約形態 被保険者 受取人
被相続人(亡父) 被相続人(亡父) 相続人(子)

◎受け取った生命保険金が非課税財産とならず、
解約返戻金が相続財産となってしまう契約形態(見直し対象)

契約形態 被保険者 受取人
被相続人(亡父) 相続人(子) 被相続人(亡父)

生前贈与の対象者を検討する

贈与を贈る対象者は、相続人以外も可能
(例:長男の嫁、孫等)

※相続人への死亡前3年内の贈与は、相続税法上、相続財産への持ち戻しの対象となるため注意が必要
(高齢者については対象者を要検討)

生前贈与の経年効果

贈与の対象の当事者を増やし、暦年贈与できる金額を増やすことができます。

暦年贈与の対象者 金額×人数 年間の贈与額
子2名 110万円×2名 220万円
子2名とその配偶者 110万円×4名 440万円
子2名とその配偶者と孫4名 110万円×8名 880万円

保険料を暦年贈与する際の留意点

暦年贈与された現金を使って生命保険を契約する場合、税務署から贈与事実を否認されないように次のような点に留意することが必要です。

① 毎年の贈与契約書の作成
② 年間の贈与額が110万円を超えるときは、贈与税の申告を行う。

※贈与税の申告期限…財産の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日

納付期限…財産の贈与を受けた年の翌年の3月15日

③ 受贈者が贈与財産を管理する。

※現金の場合は受贈者が自ら持っている銀行口座で、受贈者本人が印鑑・通帳を管理する。

※保険料は受贈者の口座から引き落としを行う。

④生命保険料控除等は受贈者に適用する。被相続人(親)には適用しない。

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